走れよメロス              平成25年4月
 太宰治の「走れメロス」。私は中学生の頃読んだ覚えがあるのですが、皆様もお読みになられた方が多いと思います。
メロスの身代わりとして人質になった友人セリヌンティウスの命を救う為、メロスは必死に駆け約束通り三日めの日没前に王様の前に帰る事が出来、二人の麗しい友情物語でメデタシメデタシのお話と思っていたのですが、メロスは走らず歩いていただけで、死力を振り絞り走ったとされる復路後半も只の早歩きだったとの研究結果が発表されました。

中学二年生の村田一真君の研究で理数教育研究所が開催した「算数・数学の自由研究作品コンクール」で最優秀賞を受賞されました。読まして頂き私は今迄 村田君の様な視点で文芸作品・小説等を詠んだ事は無く、「目から鱗の落ちる」思いで、批判精神旺盛な村田君に感服しました。
家内に言わせますと「何事にもケチを付け屁理屈を言う」私が感心するのだから よほど嫌な性格の子供なのでしょうとの事でした。・・・・村田君ご免なさい、失礼な事を言ったのは家内ですよ、私ではありません

彼の研究成果を御紹介させて頂きます。
季節は初夏とありますので夏至の頃と仮定し、イタリア南部は北緯38度で仙台と同緯度となり、仙台の夏至の日の 日の出は4時12分・日没は午後7時4分です。距離は片道10里と有りますので39kmです。
42kmのフルマラソンでは選手は2時間強で走りますが一般参加の男性参加者の平均は4時間30分位だそうです。メロスもせめて5時間以内で走ってもらわないと走った事にはなりません。

往路の出発は「初夏満点の星」とあるので午前0時と仮定し到着は「日は高く昇り・・村人は野に出て仕事を始め」とありますので午前10時と仮定すれば、10時間歩きましたから時速3,9kmです。決して走ってはいません、歩いていたのです。妹の結婚式のお祝い等を持参していた筈で、往路については歩いていたのは当然だろうと村田君の説でした。
復路は、「眼が覚めたのは薄明かりの頃」と有るので、日の出寸前の4時頃と推定しその後「悠々と身支度を始めた」とあるので出発は4時30分と仮定しました。到着は日没時間の19時と推定しました。
「真昼時、全行程の半ばに到達」と有りますので、12時に20km地点に到達しました。7時間30分かけて20kmですから、時速2,7kmです。昨日豪雨が降ったとは云え、今日は小雨となり途中から雨は止んでいたのです。メロスは何をしていたのか??あまりにも遅すぎます。これではメロスには帰る意思など無かったと疑われても反論すら出来ません。

その後、昨日の雨で橋が流された川を渡るのに1時間のロス、山賊との戦いに30分のロス・・・・
4人の山賊に襲われましたが、太宰の文章からは簡単に山賊を追い払い10分もかからなかった様に思います、メロスは体力のある強い男だったのです
峠の昇りを時速2kmで1時間、下り2kmを30分。疲労で倒れ休憩して1時間のロス
(川を渡り山賊と戦いと、アクシデントは有りましたが超スローペースで歩いているのにどうして疲労で倒れるのでしょうか?)。等々を加え出発から11時間30分後の16時には未だ24km地点にしか行けませでした。
其処から3時間をかけて残りの15kmを走るのです。太宰は「死力を振り絞り走った」と表現していますが、時速5kmで3時間・・・これは走ったのでは無く早足で歩いたと表現すべきではないでしょうか?

盗賊4人を簡単にやっつける事の出来る程、体力旺盛なメロスには早足で3時間歩く事などたやすいな事で死力を尽くすとは大袈裟です。

メロスは初日も又三日目も全く走っていないのです。

メロスはセリヌンティウスに、ただ一度だけ裏切ろうとした事を告げて詫び、セリヌンティウスも一度だけメロスを疑った事を告げて互いに詫びました。
・・・・・と最後は美しくまとめられていますが、走れば4~5時間・普通に歩いても10時間の距離を14時間30分もかけたのです。
メロス程体力のある男なら、マラソン選手程では無くとも3~4時間で走れたでしょう。
 この小説の題名は「走れメロス」では無く「走れよメロス」にすべきです。
以上が村田君の主張です。
村田君はメロスの行程表を分かりやすくグラフに作成してくれました。私は苦心してエクセルで同じグラフを作成したのですが、このページに転写する事が出来ません。写真に写して張り付けて見たのですが美しく出来ないので止めました。

追記
メロスはただ一度だけ裏切ろうとしたのでは無く、最初から裏切っていたのです。
他人から卑怯者と非難されず、友情に熱い男・約束を違えぬ男と褒められ同情されながら、自分だけが助かる方法を一日中考えていたので、こんなにも時間がかかったのです。
日没前に帰ればセリヌンティウスは解放されますがメロスは殺されます。日没を過ぎればセリヌンティウスは殺されますがメロスは許されます。
さあ・・・どうすれば良いのでしょう??懸命に帰ろうとしたが、後少しの所で間に会わなかったとの、アリバイ作り・ポーズ作りをしたのです。そして最も効果のある日没直後を狙い、疲労困憊・息も絶え絶えの状態を演出したのです。多分最後の1km程を全力疾走しただけでしょう。
(1,000mの日本記録は2分19秒です)精々3~4分必死になって走っただけなのです。メロスは平地にいた為日が沈んだと思い姿を現しましたが、王様は高台におられたのでまだ日は沈んではいなかっただけの事です。その瞬間メロスは計算間違いに気が付き早すぎた帰還を悔やんだのに違いありません。
怪我の功名とでも言うのでしょうか?、王様がそんなメロスの卑怯な心に気がつかず友情に熱い男と錯覚したので、二人共助かっただけの事でしょう。
日没寸前まで帰らないメロスをセリヌンティウスが疑うのは当然です。責められるのはメロスだけなのです。メロスがセリヌンティウスに殴られるのは当然ですが、メロスにはセリヌンティウスを殴る資格はありません。


(この項目は村田君の考えでは無く私の考えた事を追加しました。こんな姑息な事を考え、悪意に満ちた解釈をするのは、臍曲がりで根性悪のあんた位だと貴兄・貴姉の笑い声が聞こえてきそうです。)