ワンピース(歌舞伎)       平成30年5月

     
 4月初旬市川猿之助のスーパー歌舞伎「ワンピース」を観に行ってきまし
た。気候は暖かくなってきましたが、懐は反比例したかの如く寒くなってきま
したので、歌舞伎観劇も減らそうと思っていたのですが、大津の息子夫婦
からお誘いを頂き、私達夫婦も思い切って贅沢をする事にしました。
息子夫婦とは云えもう50前の中年のオッサンとオバサンですが、残念な
事に子供に恵まれなかったので、犬を可愛がっています。
それだけに歌舞伎だけでは無く夫婦で出かける機会も多い様子です。
今回、お誘いを頂いたのも息子夫婦の優しい心遣いなのでしょう。
2月に嫁からバレンタインチョコを頂いていましたので、お返しにフランスの
ワインを買って行きました。
   
(家内の知人にソムリエ資格を持つ酒屋さんがおられます。一本百万円以上
    すると言われるロマネコンティと同じヴォーヌ・ロマネ村で作られたワインでロマネコン
    ティ程高価ではありませんが、拙宅では飲む事は無い価格のワインでした。)
この様な事があれば息子夫婦と会う機会も増えますので、私達爺婆には
嬉しい事でございます。

以前からテレビのアニメ放送でワンピースが放送されている事は知っては
いましたが私達爺婆は見る事も無く、数年前猿之助がスーパー歌舞伎
として舞台化されたのを知りアニメを歌舞伎化した事に驚き、どの様な舞
台なのかと興味がありました。一昨年3月松竹座でワンピースの公演が
行われた時に観たかったのですが、その時はチケットが取れず、後日シネ
マ歌舞伎
(映画)で見ただけでしたので、かねてから劇場で観たいと思って
いました。
やはり映画と劇場では大違いです。映画は上映時間2時間弱でしたが、
歌舞伎は4時間、幕間に30分の休憩が2回ありましたが実舞台が3時間
もの大作です。映画ではカットされた場面が沢山あったのでしょう。
舞台演劇と映像・照明・音響技術を駆使した新しい歌舞伎、スーパー
歌舞伎Ⅱの名前に相応しい歌舞伎だと感激しました。
ルフィが宙乗りをした時、大きな鯨が現れルフィの動きに合わせ観客席の
上を空中散歩したのには驚かされ、又戦いの場面では観客が総立ちに
なりタンバリンを打ち鳴らし応援しました。
(スーパータンバリンと言い800円で売っ
ていました。)
前席の方が立ち上がれば私も立たざるを得ず、立ち上がりタン
バリンを打ち鳴らし応援させて頂きました。
舞台と観客が一体となり芝居を盛り上げる。実に楽しいひと時でした。

又、坂東巳之助のオカマ役ボン・クレーも面白い演技でした。背中に白
鳥の飾り物を背負っていましたが、白鳥とオカマ、何か関係があるのでし
ょうか?。    
(歌舞伎界にはオカマの方が多いのかと想像してしまいます。)
      ♬ 男の道をそれるとも 女の道をそれるとも
        踏み外せぬは 人の道
        散らば諸友 真の空に
        咲かせてみせようオカマ道ウェイ ♬ 
又巨大な女性の下半身のオブジェが現れ、股間の大事な所に丸い穴
が空きそこにミラーボールが設置されピカピカと光が発せられるのです。
私は股間の光線が気になって演技を見る暇もありませんでした。
漫画を読んだ事はありませんが、原作には女体をスケベに表現する様な
場面があったのでしょうか?猿之助は何を表現したかったのでしょう?。
女性の〇〇〇パワーが男の活力の源とでも?。それとも単に私の様な
スケベ爺を嬉しがらせる事が目的だったのでしょうか?。
     
(猿之助の傾(かぶく)心・遊び心なのでしょう。〇〇〇とはオコメの事です。)
     
       オカマの巳之助               巨大な女性の下半身オブジェ
いままでの歌舞伎の観客は高齢者が多かったのですが、今回は若い観
客が多く、私も年齢を忘れ若い方々と楽しく観劇出来ました。
息子夫婦に誘って頂いたお陰で贅沢をし、楽しい一日を過ごす事が出
来喜んでいます。

私達が観た舞台は猿之助が出演されていましたが、猿之助にはこの前
の怪我の影響が未だ残っているのでしょうか?。
25日間昼夜2講演で行われましたが、主役のルフィ役は猿之助の出演
は16公演で残りの公演は尾上右近(音羽屋)が演じたそうです。
尾上右近は昨年猿之助が怪我で休場した後、急遽代役として主役の
ルフィを演じましたが、今回も猿之助が休場の時はルフィの他女帝ハンコ
ック等一人4役を演じたそうです。
右近の舞台は昨年2月松竹座の花形歌舞伎「義経三本桜・渡海屋」の
「入江丹蔵」役を見た事があります。
   
(他にも観た舞台は有ったと思うのですが、呆け爺は思い出せません)
尾上右近は曾祖父が六代目尾上菊五郎・祖父は鶴田浩二・父は清元
宗家の七代目延寿太夫で、清元の七代目栄寿太夫を襲名されていま
す。歌舞伎界・清元界の名家の出身で、将に古典芸能会のサラブレッド
です。まだまだ25歳と若く、これからの歌舞伎界・清元界を背負っていか
れるのでしょう。
歌舞伎でも清元が演奏される事がありますが、独特の歌い回しの為私に
は歌詞が良く分からず、イヤホンガイドを聞きながら観ています。 
     
 歌舞伎界以外からは浅野和之や平岳大・下村青・嘉島典俊等が出
演されていました。猿之助の歌舞伎界以外にも広がる広い交友関係が
偲ばれます。
浅野和之氏は前作のスーパー歌舞伎「空を刻む者」でも出演されていま
したので、猿之助は浅野の演技力を高く評価しておられるのでしょう。

歌舞伎の語源は傾
(かぶく)で本来の意味は「頭を傾ける」でしたが「常識
はずれ」や「異様な風体」を表すようになり、やがて風体行動が華美な事
色めいた行動をさす言葉となり、その様な身なり振る舞いをする者を「か
ぶき者」と言われたそうです。歌舞伎本来の有り方は「かぶく」事で古典を
踏襲しつつも常に新しい芸に挑戦する事かも知れません。
猿翁
(先代猿之助)が始めたスーパー歌舞伎は、「けれん」として歌舞伎界
本流からは異端視された「早変わり」や「宙乗り」を積極的に取り入れ新
しい歌舞伎を作り上げました。猿之助は先代の意思を受け継ぎ新しい歌
舞伎に挑戦されているのでしょう。アニメを映像や照明・音響を交えて歌
舞伎で演じる斬新な発想には驚く他ありません。

  
(藤山直美のスーパー喜劇「かぐやひめ」にも宙乗りがあり、面白く観せて頂きましたが
   澤瀉屋のアドバイスがあったそうです。・・・・27年5月藤山直美・参照)