山のあなた 平成25年4月 | |
山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう・・・・・・・ カールブッセ作 上田敏訳 この詩を、中学生か高校生の頃教えて頂いた記憶はありますが、冒頭の部分しか憶えて無く、漠然と今現在苦しい事があっても希望を無くしてはいけません、山の向こうには(将来)きっと良い事がありますよ!!・・・・とその様な詩だろうと思っていたのですが先日図書館で「海潮音」を見つけ「山のあなた」を読んでみて、私の思っている様な詩では無い事が分かり驚きました。 この歳になり一つ賢くなりました。 山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいふ 噫(ああ)われ人と尋(とめ)ゆきて、 涙さしぐみかえりきぬ 山のあなたになほ遠く 幸い住むとひとの言ふ この詩は幸せを見つける事が出来ず、悲しみに打ちひしがれた詩の様に思われるのですが?・・・・・・・・ 私の解釈 山の向こうに幸せがあると聞いて捜しに行ったが、見つける事が出来ず、更に遠くの山の向こうだと言われ涙ながらに帰ってきた。 私の解釈は間違っているのでしょうか? 大漁 金子みすゞ 朝焼小焼だ 大漁だ 大羽鰮の 大漁だ。 浜は祭りの ようだけど 海のなかでは 何万の 鰮のとむらい するだろう 私の大好きな詩です。NHKの子供番組「日本語で遊ぼう」を孫と一緒に見ていてこの詩を知りました。みすゞさんは人の命も鰮(いわし)の命も同じ大切な命と、とらえておられるのです。 お寺の和尚に動植物から「命を頂く」とのお説教を聞く事はありましたが、いつも聞き流すだけでした。 この詩を知りみすゞの優しい心に感動し、早速詩集を買ってきました。 「私と小鳥と鈴」この詩が(みんなちがって、みんないい)と締めているのが素敵です。他にも「草の名」「不思議」・・・・・心洗われる様な素晴らしい詩が沢山ありました。 何時の日かみすゞの故郷山口県の仙崎を訪れたいと思っています。 千曲川旅情の歌 小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(いうし)悲しむ ・・・・・・ 嶋崎藤村(落梅集) この歌も学生の頃教えてもらった歌で記憶に残っていましたが、昨日の事さえ憶えていないのに昔の事は良く覚えています。 なかでも二節目が好きでした。 昨日またかくてありけり 今日もかくてありなむ この命なにを齷齪(あくせく) 明日をのみ思いわづらふ 藤村も私の様にお気楽な男で、明日は明日の風が吹くと、余り悩んだりしない男だと思い好きだったので、10年程前に上高地に行った時、足を伸ばして千曲川・小諸・佐久方面に行って行ってきました。その時改めて藤村の勉強をしたのですが、とんでもない男だったのですね。 姪を孕ませ・・・・100歩譲ってそこまでは止むを得ない、男と女の仲 理屈だけでは治まらない事もあるでしょう。しかし彼はその事を小説「新生」で発表したのです。姪や家族・親族の立場を思いやろうともせず、己の名声だけを追い求める嫌な男だったのです。 芥川龍之介は「新生」の主人公ほど老獪な偽善者に会った事は無かった、と書いています。私も同じ様に思います。 尤も谷崎潤一郎の「痴人の愛」「蓼食う虫」も一緒ですけどね。 人生の下り坂 遠藤周作のエッセイだったとおもうのですが(私の記憶違かもしれません)次の様な文章を見つけました。 「人生の下り坂」 上り坂では足元しか見ておらず必死に登るだけ、 それに比べ 下り坂では視野が開け景色を楽しむ事が出来る。 私はこの文章を「今迄有難う、これからは夫婦二人余生を楽しみながらゆっくりと生きて行こう」との意味を込め、奥様に紹介した所、奥様曰く 「大して高い山では無かったから景色もそれ程綺麗でも無いけどね」 と返ってまいりました。 悔しい!!・・・・・私には返す言葉もありません。又しても口で負けました。 奥様は大坂生まれの大坂育ち、お笑いの街大坂の精神が骨の髄まで沁み込んで、いつも「あめちゃん」片手に口から先に生まれてきた様なおばちゃんです。 それに引き換え私は紀州の田舎で山猿と猪を相手に育った野暮天男、 アワワ・・アワワ・・・と丁度漫才の大助花子と同じです。いつも奥様に言い負かされています。 |